選ばれなかった
ぼくは本当にだめな人間で、どこが一番だめかと言うとぐちぐち言うくせにだめな人間だと開き直ってるところ。
自分の何がだめかはある程度わかってるはずなのに努力もせずに、そのくせ変わらない現状に勝手に絶望してる。
このままでもいいけど、このままじゃよくない。
このままじゃよくないけど、がんばれない。
勝手によくなってくれればいいのに、そんな都合のいい話はないのに。
でもぼくががんばって仮に何かがよくなったとして、がんばりつづけないとそのよくなった状態は保てないわけで、ずっとがんばりつづけないとだめなんてすぐ壊れちゃうよ。ぼくはだめだめなんだから。
このぼくがだめなまま、だめでもいいよと許してくれる人、それでいてしっかりケツを叩いてくれる誰かをずっと探してる。
そんな人いるわけもないのに。
というか探してすらないくせに。
勝手にあらわれてくれるのを待ってる。
ぼくは本当に最低でどうしょうもないやつで、何を言われたってでもでもだってで返して、人一倍救われたいはずなのに救われる準備もしてない。
それでも心の優しい人は少なからずいるから、こんなぼくを見兼ねて手を差し伸べてくれる人がいる。
いた。
今までも、今も。
本当に優しい、こんなだめなぼくをまだどうにかしようと思ってくれる。
でも、こんなこと絶対言う必要ないし、悪いのはどう考えてもぼくだし、唯一の味方と言ってもいい人たちにわざわざ石をぶつけるようなことなんだけど、どんなにぼくを助けてくれようとしたって、あなたはぼくを選ばないじゃないか。
恋人に、一番の親友に、絶対信頼のおける仲間に、ぼくを選ばないじゃないか。
選ばなかったじゃないか。
数は多くない、けど少なくもない、過去に居たぼくに手を差し伸べてくれた人たちにはみんな彼氏がいた。ぼくより仲がいい友達がいた。仕事相手にぼくを選ばなかった。
それはぼくが単にだめなやつで、魅力もなくて、こうして助けてくれる人にまでわざわざ噛みつくようなクズだから、ぼくが二億%悪いんだけど、それでもあなたがぼくを選ばなかった事実がちゃんとあるじゃないか。
はじめからこんなに卑屈じゃなかった。
もう少しがんばってた昔もあった。
あのときの結果が、ひとつひとつのあなたの選択が、ぼくにとっては重かった。
選ばれないことには慣れなかった。
こんなぼくに優しくしてくれるような心の広い人でさえ、ぼくを選ばなかった。
じゃあきっともう誰もぼくを見つけられないじゃないか。
ぼくを選んでくれないあなたに、ぼくの価値を語られることがつらい。
ぼくにはあなたが選ばない程度の価値しかない。
こんなことを言えばまた誰も救ってくれなくなる。
言わなくてもどうせいなくなるし、いままでもいなくなってきたけれど。
わざわざこんな風にして自分からトドメをもらいにいかなくてもいいのに。
ぼくなんかを見てくれている大切なあなたの精一杯の親切を台無しにしてまでぼくは何がしたいんだ。
最低。
それでもまた助けてくれますか。
正体
ぼくにはなんでも話せるだれかじゃなくて、なんでも話してくれるだれかがいないんだって気づいたとき、ぼくのひとりぼっちの正体がわかった。
ぼくがどこかに行きたいときに連れて行きたいあなたは、どこかに連れてく相手にぼくを選んだりしない。
いつかぼくを選んでくれる人があらわれると思っていて、でもそれは間違いだったから自分から動くように頑張った。
でも頑張ったって何も変わらなかった。
いっぱしに傷つけられた気になって、勝手に腐った。
このままきっとだれも自分の特別な場所に、ぼくを置いてくれない。
地元
ただ地元が同じというだけで仲良くなった小学校からの友達。いまでもたまに飲んだりする。
趣味が合うわけでもないから、そんなに楽しくはないなとか思っちゃたりする自分の薄情な一面に気づいてがっかりする。
ただ昔から知ってる、ずっとなんとなく仲良かったってだけで、実体はどこにもないのにどこかで繋がってる気になってる。
その錯覚がきっと絆とかいう洒落臭いやつなんだろうな。
小学校や中学校の頃はなんでもなかったけど、しばらく会わないあいだに完成したぼくという人間が本当はどんなにだめなのかきっと死ぬまでわかってもらえないんだろうな。
本音もたぶん言えない。
絆みたいな何かにあぐらをかいて、何もしない。
裏切り続けるし、裏切られ続ける。
そもそも心のほんとのほんとの奥の部分では信頼も何もないんだろうな、だから裏切りとかでもない。
みんないいやつなのに。
ぼくだけが最低だ。
きっといつかぼくが死んだら、みんないっちょ前に悲しんでくれる。
ぼくのことなんて何も知らないのに。
供養
小学校のときの友達が自殺した。
同じ時期に東京に転校してきて、同じマンションに住んでたから当時はよく遊んだ。
お互いゲームが好きだった。
でも中学にあがるとめっきり遊ばなくなった。
クラスも違ったし、自然とつるむ友達も変わっていった。
だからどこの高校に行ったかも、大学に行ったのかも、卒業したのかも、就職したのかも知らなかった。
高校出てすぐの同窓会にそいつは来なかった。
友達伝いで自殺を知った。
最近の話じゃない。
それが今から何年前かも忘れた。
1年前か、2年前か、もしかしたらもっと前だったかも。
記憶があやふやだけど、同窓会のときはまだ死んでなかったはずで、あのときはなんで呼べなかったんだっけ。
ただ単に連絡先がわからなかったか、断られたか。
もしかしたら居たっけなあ。
なんかもうそんなレベルでしか思い出せない。
友達数人で「線香だけでもあげにいくか?」と話した。
結局行かなかった。
自殺を知らせてくれた友達は「行ってやってくれたら嬉しいけど」としか言わなかった。
そいつは、なんだかんだで足が動かなかったぼくらを軽蔑しただろうか。
もっとも、ぼくらよりもう少し離れた関係の元クラスメイトはまだあいつが死んだことにも気づいてない。
なんで死んだのかも、どんな生活をしていたのかも知らない。
ただ小学校のときにあいつの家で戦わせたモンスターとか、教えてくれた漫画とか、そいつの母ちゃんが握ってくれたおにぎりの具とか、そんないくつかだけを思い出してぼくの中の供養は終わった。
ぼくが死んだらきっと皆も、そう。
こんなオナニーみたいな文章を書いて何が供養だ、馬鹿馬鹿しい。
ぼくなんてもっと嫌われるべき、まだ足りない。
不器用にでも
たとえば同じ音楽を聴いたり、同じ映画を観たり、そんなことで解消できるぼくの孤独。
あの漫画途中までは面白かったのにねえ、だとか、えっあのライブぼくも行ってんだよ、だとか、そんなことで得られるつながり。
そんなことでしか消せない不安。
どうしてもさみしい夜に音楽を聴いて、どうしてもさみしい夜に音楽を聴いてる自分に酔うことでしか誤魔化せない。
あの娘は別にぼくのことを嫌いとかそういうわけじゃないって何度も言った。
でももちろん好きとかではないとも言った。
きっとあの娘だけじゃない、ぼくがあの娘を好きだったからあの娘のことばかり取り上げてしまうけれど、周りのだれかれもそう思ってるはず。
好きの反対は嫌いじゃなくて無関心だなんてくだらない言葉があるけど、そうは思わない。
好きの反対はやっぱり嫌いだ。
でもあの娘の無関心も、みんなの無関心も、それは無関心じゃなくて“嫌い”のあらわれだ。
大人だから嫌いって言わない、ズルいから嫌いって言えない。
自分は嫌われたくないから嫌いって言えない。
きっとぼくもそう。
心の奥では大嫌いなあいつのことさえ、口に出してはっきり大嫌いだなんて言えない。
言う必要もない。
だから、好きって言葉くらい簡単に言えれば良いのに、簡単に言ってしまうのもよくないらしい。
不器用にでも生きられるけれど、このままじゃ不器用にしか死ねない。
固有名詞
ああこれは自分のことを歌ってくれてるんだ
そう強く感じる歌ってある。
でもだいたいそんなの勘違いで。
そんな勘違いのおかげで泣けたりする。
妙にリアルな、半径1m以内の固有名詞を上手に歌詞に使われるとグッとくる。
レンタル屋さんに走った。
金が全然ないからグリーンラベルで乾杯して
安い酒も美味しく飲めた。
笑笑でいいから帰りたくない
どこにいたいかじゃなくてだれといたいか。
待ち合わせはローソンで おにぎりを2つ買って家
そんな経験したことないのに身近に感じた。
小さな恋のメロディという映画を観たことがないなら早く観た方がいいぜ
ぼくもそう思う。
ぼくは殴られたくはないけれど。
まだまだ探せばたくさんあるけど、こんな感じの歌が好き。
我慢
嫌われたくなかった人に嫌われて、泣いた。
でもよく考えたらもっと前から嫌われてたろうな、って考えて泣いた。
じゃあ嫌われたくなかった人じゃない人に嫌われるのはいいのかって考えたら、やっぱりそれも悲しいし泣いた。
みんなはもっと多分ちゃんとやってるんだ、きっと、ずっと。人に対してちゃんと誠心誠意こめて、きづいてないかもしれないけどしっかり相手のことを気遣って自分を殺してるんだ。ぼくばっかりが大変なわけじゃないのに、ぼくだけがサボるから、ぼくだけがうまくいかないんだ。
我慢して生きてるんだ、みんなも。
楽して生きようとしてるのがいけないんだ。
呼吸をするように人に嫌な気持ちをさせちゃうから、もっと長く長く息を止められるよう練習しなきゃいけないんだ。
みんなもちゃんとがんばって生きてるんだから、ぼくはがんばって生きてるってことをわざわざ言っちゃだめなんだった。
だれにも迷惑かけないで生きたいけど上手にできない。
「ああこの人は迷惑かけても許してくれるんだ」って必死になって探しあてたつもりでも、きっとその人が我慢してくれてるだけだから。
仲良くしたければしたい人ほど、慎重になって話さないと。ぼくはどうせすぐ嫌われちゃうんだから。
すぐ心を開くけど、それはだれにも心を開いてないのとおんなじだった。
大切な人には嫌な気持ちになってほしくないから、なるべく関わっちゃいけないってことを覚えた。
やっと、わかった。
つらいときつらいって言わないように、我慢して生きるんだもっと。